てゅーびーこんてぃにゅー

「お疲れさまでした。」
「あと、お願いねぇ〜」
「任せてください。せっかくの特ダネ無駄にしませんって。」
「頼もしいじゃん。それじゃ〜ねぇ。」
「長岡さんは、これから何処に?」
「久しぶりの日本だからね、親にも顔見せなきゃ」
「そんな事言って、彼氏に会いに行くんじゃないんですか?」
「そんなヤツいたら、アメリカなんて行ってる訳ないじゃん」
「はははっ、そうですねぇ。ゲラ上がったら連絡します。」
「たのんま〜す」
私は、そう言ってエンジンをかけ走り出す。

親に会いに行くと編集者には言ったが、半分はウソだ。
顔ぐらい出せと、うるさく言ってくるから少しぐらい寄るけど今回の目的はアイツに会う事。
高校の時からの宿題を片付けるために・・・

アイツ・・・ヒロとは、中学の時からのいわば幼馴染。
ヒロには、幼稚園からの幼馴染があと二人いる。
一人は、ヒロの親友の雅史。
もう一人は、私の親友のあかり。
ヒロと知り合ったのも、あかりと親友になってからだった。
いつの間にか仲良くなって、楽しくってクラスも違うのにいつも一緒にいた。
そんな日がいつまでも続くと思っていた。
多分気づきたくなかったんだ、私達が男と女だった事。

初めに気づいたのは、あかりだった。
あかりはヒロのことがすきだった。
多分、私と出会うずっと前から。
ヒロは、あかりにとって初恋の人だった。
だけど私は、その事を知っていて、ヒロを好きになってしまった。
私は、四人の関係、特に親友のあかりを失う事が怖かった。
だから、ヒロとはケンカ友達、競争相手の枠を出ないようにしていた。
あの時までは。

高一最後のテストの追試をきっかけに、私とヒロが一緒にいる事が多くなった。
学校の帰り道
街の中での買い物
カラオケやゲ−ムセンター
(やっぱり私は、ヒロのこと好きなんだ・・・)
押さえつけたはずの気持ちが、大きくなるのを感じていた。

ヒロとあかり。
私にとって、どちらも大事な人。
私はどちらも選ぶ事が出来なかった。

いっそ二人が付き合えば、こんな苦しい想いをしなくなる・・・
そんな風に考えて、二人をくっつけるために走り回った。
だけど、結局私だけ空回りしていた。
ドタバタしたあと、ヒロに捕まって告白されると、自分の気持ちがあふれ出てきてしまった。
瞬間あかりの事を忘れてしまうほどに・・・

それからヒロとは、高校生の間ケンカ友達の延長上で、彼氏彼女をやっていた。
「キスまでの友達」、それが私の出した答えだった。
親友のあかりに対しての、私なりのケジメ、だった。
このケジメを守るため、二人から逃げ出すため、私は高校卒業後すぐに渡米した。

渡米後の忙しさはめまぐるしく、ヒロ達の事を考えることを許さなかった。
この国は、良い意味でも悪い意味でも、自分が必要だった。
自分のやりたい事、したくない事をハッキリ相手に伝える自分が。
周りがなにか用意してくれる日本と違って、こちらでは黙っている人間に誰も構ってはくれない。
相手に伝えるため、自分自身を知り、何がやりたくて、どうすべきか、そればかり考えて、がむしゃらに仕事をこなしていた。
そして名指しで仕事が増え始めた頃、日本からの仕事が舞い込んだのだった。

アイツに会える。
あかりにも会いに行こう。

もちろん仕事には、ふたつ返事。
そろそろ日本を拠点に、世界中かけ回るのも悪くない。

私は、もう高校生だった頃の私じゃない。
アメリカで学んだ事。
やりたい事は、やりぬく事。
相手が傷つく事で、自分が傷つく事を恐れない。
きっと分かり合える。私達には、あの頃からの絆があるから。 

何を恐れていたんだろ。

私は、もう迷わない。

私は、欲張りなんだから。
親友も、
恋人も、
どちらかなんて選べないなら、
両方選べばいい。

私は、もう傷つかない。

ヒロもあかりも大好きだから、
正々堂々
自分の気持ちに素直に言おう。

ゲームオーバーはまだまだ早い。
コンティニューのカウントダウンは始まっているかもしれないけど。
ゼロじゃないなら。
カウンター大逆転を狙ってあげる。
あかり、貴方が相手なら手加減なんてしないから。

二人を、両手で力いっぱい抱きしめてるんだ。
ただいまのキスといっしょに・・・ 

 FIN