春の胃袋

 

アカシアの浅きひかりの蜂蜜の淡さわれにはふさはしからず

 

ぺらぺらのスライスチーズの貧しさが心に相応ふ今朝のけだるさ

 

つぷつぷとつぼみ膨らむブロッコリーチン(、、)して息の根止めてあげます

 

うはあごに溶けたマシュマロおしつけて幼児返りのやうな朝陽だ

 

倖せにかたちがあるとしたならば パンの酵母は働くはたらく

 

つぶつぶと主張のしるき玄米を胃に放りこみわたくしにする

 

烏賊に染む昨夜のおでんの残り汁層なす記憶を持ちてをるらむ

 

キッチンに物憂ひ熱が籠りをり春の字を持つ魚焼く夜

 

肉味噌をまとふキャベツの葉脈の分断されたる哀しみのあり

 

豆ごはんふはとよそへば草笛のひびかふ原っぱお茶碗の中

 

 

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