じやぱん

 

幼子の皺の少なきてのひらに前世の汗がかすかに滲む

 

手放しで心を解くをくるしみて水凝らせるさんぐわつの空

 

時代から置いてけぼりをくつてゐる気分に探す公衆電話

 

じやぱあんと乾いた音で呼ばれゐる器の抱けるにつぽんの闇

 

穴のあるもの擂り下ろす寂しさよ明るき花恋ふキッチンの窓

 

香せぬ百合を抱へてゐるやうなどつちつかずに長く沈めり

 

陽光が煌きをるははるか沖 たましひの飛び出しさうな喉

 

あざあざと黄の色のこる金針菜水に放てば夕映えのみづ

 

北側の凍てて開かぬサッシ窓道草してゐる春を待ちをり

 

ジキタリス絶えたる庭に日常は開花してをりぼんやりあかるい

 

 

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