EVANGELION
葛城ミサトの運転技術
「遅かったわね、葛城一尉」
棘がたっぷりと生えた口調で、赤木リツコは告げた。
「あんまり遅いから、迎えに来たわ。人手も時間もないんだから、ぐずぐずしている暇、無いのよ」
15年ぶりの使徒襲来のこの時、リツコの言葉通り、人手も時間も足りない。
それなのに、重要人物の迎えに遅刻し、更に、本部施設内で道に迷うという醜態を晒して、貴重な時間を浪費したミサトに対しての口調が、冷たすぎるほどに冷たくなったとしても、仕方のないことだろう。
「ごめーん、迷っちゃたのョ、まだ不慣れでさ」
応じるミサトの声に、反省の色はない。
こういう女だ。
つきあいが長いだけに、その性格を良く知っている。
これ以上、更に咎めたとしても、効果はないだろう。
ならば、咎めるだけ、無駄である。
何しろ、今は人手も時間も足りないのだから、無駄なことをするべきではない。
リツコは、そう判断すると、話を先に進めるべく、ミサトの連れてきた重要人物に話題を移すことにした。
「その子ね、サードチルドレン……って?」
ちらと流し目をくれて、重要人物──サードチルドレン、碇シンジを見たリツコの言葉が、尻窄みになった。
「どうしたの、この子?」
碇シンジは、これ以上、目を見開くことは不可能だろうと言うほど、精一杯に目を開いている。
その瞳は、虚ろ。
これがマンガならば、白目の中に、べたに塗られた真っ黒で輝きの無い黒目、と言う感じで表現されるだろう。
更に、口は半開き。
そこから、半ば魂がこぼれ落ちているような開き方だった。
「いや〜、使徒を目撃したり、N2地雷で車がひっくり返ったりして、びびっちゃったみたいなんだわ」
ミサトが、答える。
こんな線の細いことでは、とても、彼に任される役割に応えることは出来ないのではないか。
そんな、不安げな表情。
「く、くるま!」
しかし、そのミサトの言葉を吹っ飛ばすような素っ頓狂な大声で、シンジが叫んだ。
目に見えて、がくがくと体が震え始める。
そして、虚ろな口調で呟き始めた。
「ミサトさん。とめてください、とめてください、もっと、ちゃんと」
「ど、どうしたの、シンジ君?」
慌てて、リツコが尋ねるが、シンジは聞いていなかった。
「ごめんなさい、すみません、だめ、死にます」
「シンジ君、シンジ君、しっかりして!」
「ああ〜」
やっぱり、シンジは全然聞いていなかった。
「おじいちゃんが、おじいちゃんが──にげて〜〜!!」
「シンジ君、シンジ君!!」
碇シンジ、精神崩壊。
人類、滅亡……
(終わり)
後書き、もしくは言い訳
あずまんが大王、面白いです。
以上。
生ぬるい目で見て下さい。
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