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プログラムASZ

「さあ来い! 来栖川姉妹を守る時のオレの力は無限大だぜ!」
セリオからは、見えないように、綾香に合図を送った。
もう、一度やるぞ。という合図だった。
綾香は理解したように、うなずいた。
ザッ!
ザザッ!
再度、突進してきたセリオをよく見て、切っ先と木の棒を合わせて食い止める。
そこに、横から綾香が飛び込んでくる。
ドンピシャ!
このタイミングなら、セリオはそれに対応仕切れない。
オレが食い止めていた切っ先が突然、横に軌道を変える。
突きから、横なぎに変わった軌道は、綾香の脇腹にヒットした。
バシッーーン!!
「綾香!」
綾香は、信じられないくらい派手に吹っ飛んだ。
オレは綾香をかばうように、セリオとの間に入る。
「綾香、先輩と一緒にいろ。先輩、綾香を頼む」
「浩之…」
綾香は苦しげな声で返事をした。
「…はい」
先輩は、綾香に駆け寄った。
「突きを外されても、間髪入れず横なぎに変化できる。この技に死角はありません」
セリオの冷たい声がひびく。
オレはセリオと対峙しつつ、円を描くように移動した。
後ろに綾香と先輩がいたら、万が一、止め損ねた時どうなるか。
「邪魔が入りました。しかし、壱式を止めるとは…」
セリオは、さっきの構えのから少し刀を上にあげた。
おそらく、突き下しの構えだ。
威力とスピードが増加されるだろう。
しかし、その反面、カウンターが決まれば…。
ザザッ!!
セリオが突進してきた。速い!
こうなれば、見よう見まねで…。
セリオの突きを体を開いて紙一重でかわす。そして、横なぎに変わる前に、左足を軸に回転して、右薙ぎに棒を叩き込む!
「おおおおっっーー!!」
カウンター+遠心力+オレの腕力が叩き付ける棒の威力となってセリオの肩に食い込む!
バシィーーーン!
セリオはその衝撃に耐えられなかったのか、地面に倒れ込んだ。
プシューー!
「はぁはぁ、メイドロボとはいえ、女の子を殴るなんて後味悪いぜ。ごめんな、セリオ」
「浩之、スイッチを!」
綾香の声にやらなければならないことを思い出した。
セリオを抱え上げ、首の後ろにあるスイッチを探す。
「おっ、あった。これだな」
スイッチOFF。
「ふぅー、なんとかなったな」
「浩之、すごいじゃない」
綾香が声を掛けてくる。
「まあ、能ある鷹は爪を借りるかな、見よう見まねでやったのさ」
「カッコよかったわよ。ね、姉さん」
「…かっこよかったです」
先輩は赤くなってうつむいた。
「綾香も大丈夫か?」
「うん、なんとかね。食らう瞬間に自分で飛んで、衝撃を逃がしたから…」
なるほど、それであんなに派手に飛んでったのか。
「あの…、藤田様。ここにもうひとり負傷者いるのですが?」
声の方を見ると、地面に寝転がったじーさんがうめいていた。
芹香先輩が、じーさんのもとに駆け寄って行く。
「お、お嬢様。この私めに…。このセバスチャン、感謝の言葉もございません」
「大丈夫、死にゃしないわよ」
綾香が傷を見ながら言い放った。
セリオを見ると、長瀬主任が抱え起こしている。
頭に葉っぱ付いているところを見ると、オレ達が戦っている間、木の影にでも隠れていたらしい。
「いやぁー、まだこのプログラムは改善の余地があるようですな」
「二度と作るな!」
オレは木の棒をハリセン代わりにつっこんだ。

再来週の連休…。
「いい湯だ…」
こないだの騒ぎのあと、まあ、なんとか寺女の文化祭も終了し、こうして報酬の来栖川姉妹混浴温泉ツアーに来ている。
見晴らしのいい露天風呂。くー、最高だね!
長瀬主任は、綾香が手を回して、減棒処分にしたらしい。
セバスチャンは、セリオとの戦いの時のケガで5針縫って入院中だ。
まあ、その代わりに、運転手を兼ねてセリオの同行になった。
運転前に、サテライトサービスから運転のデータを受け取っていたときは、また暴走するんじゃないかと緊張したぜ。
そして、綾香と先輩は、
「あ、いたいた。浩之ー!」
バスタオルをまいた綾香が入ってくる。
「ほら、姉さんも」
その後ろに、同じくバスタオルをまいた芹香先輩の姿も見える。
やった! これでオレの苦労も報われる。
あれ、もうひとり人影が…。
セリオだ!
「セリオ、風呂に入って大丈夫なのか?」
「はい、問題ありません。完全防水で設計されています」
淡々と答える。
三人が湯船につかる。
三人の美女に囲まれて露天風呂!こう、なんていうか、男のロマンを感じるねぇー。
芹香先輩は、湯につかりながら、ポーっとしている。
「………(ぽーー)」
オレの視線に気づいて赤くなりながら、顔の下半分まで湯に沈めていく。
「ほら、セリオが打った後が、ここに…」
綾香はタオルをずらして、まだ後が残っているのを見せた。
肌がほんのり桜色に染まっている。
オレはじーっと見つめてしまう。
「申し訳ありません。綾香お嬢様」
「もう、いいけどね。あ、こら何見てんのよ」
綾香がオレの視線に気づいてタオルを元に戻す。
「お前が勝手に見せたんだろー」
「見る方が、悪いに決まっているでしょ!」
とふざけあっていると、
「最終セキュリティ解除、女性の裸体を見た事は、”悪”と認識します!」
……え?
嫌な予感がして、振り向くと…。
そこには、どこからともなく取り出した日本刀(何か本物っぽいぞ)を持った、セリオが立っていた。
オレは、この戦場で生き延びる事ができるのか?

END



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