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オトシブミの国

チョッキリの国


アシナガオトシブミ族


オトシブミ族
オトシブミ亜族
  オトシブミ
  ムツモン
  ウスモン
  ウスアカ
  ヒメクロ
  セアカヒメ
  エゴツルクビ
  ヒゲナガ

Clitostylina
  アカクビナガ

マダラオトシブミ亜族
  ゴマダラ
  ヒメゴマダラ
  ヒメコブ
  オオコブ

オトシブミ族Apoderini

 後頭部がくびれ,より葉巻行動に適した形態をしている.雌雄の形態差の小さな種が多く,判別は脛節端の鉤状突起の数がオスでは1個, メスでは2個となっていることを用いる.日本産オトシブミ族は,オトシブミ亜族 :5属8種,Clitostylina :1属1種,マダラオトシブミ亜族 :,3属4種に分けられている.ヒメクロオトシブミ,セアカヒメオトシブミ, ヒゲナガオトシブミ,ヒメコブオトシブミ,オオコブオトシブミについては分類上の問題が残っており今後種の分割統合があり得る.


オトシブミ亜族Apoderina


オトシブミApoderus (Apoderus) jekelii Roelofs,1874

体長 オス:8.0-10.0,メス:7.0-9.0(mm)
色彩 上翅: 鮮やかな赤褐色(標本にすると褐色),他はやや光沢のある黒色,上翅は黒化することがある.前胸が赤色の個体もいる.
特徴 最も大型の種で色彩も鮮やかなのでよく目立つ.オスの後頭部は長い円錐状をしており,丸く短くくびれるメスとははっきりと異なる.前胸は前方に丸く細まる.
近似種 なし
ホスト クリ,コナラ,ミズナラ,ヤシャブシ,ヤマハンノキ,ハシバミ,ダケカンバ
生態 年2化?初夏,晩夏,両裁型揺籃,片裁型揺籃
片裁型は横一直線に主脈を越して切って巻く.巻き上がった揺籃は葉の表が多く表面に出る.両裁型は主脈を残して横一直線に葉を切り,次に主脈切るが裏側をうすく切り残す.葉の裏側から主脈に噛み傷を施し巻き上げる.揺籃を切り落とすものと落とさないものとがいる.新成虫は夏に現れ,少なくとも一部は初秋にかけて揺籃を作っている.
分布 普通種(平地,山地)
北海道,本州,四国,九州,朝鮮        県別分布表




ムツモンオトシブミLeptapoderus (Paraleptapoderus) praecellens Sharp,1889

体長 6.7-7.5(mm)
色彩 光沢の強い黒色,上翅に赤褐色の斑紋がある.
特徴 前胸は三角形でやや丸みがある.上翅にある紋は個体によって異なっており必ずしもムツモンではない.オスの腹部末端節は強く窪み,メスとの違いは明瞭である.
近似種 なし
ホスト ヤマハッカ,ヒトツバヨモギ,ヒキオコシ
生態 年2回初夏,晩夏,曲裁型揺籃
比較的湿った暗い林内にしばしばヒメコブオトシブミとともに見られる.フキの葉を後食しているところを見ることが多いがフキには揺籃を作らない.葉を横J字状に切って巻く.所によっては揺籃を切り落とす.新成虫は夏から初秋に見られることがあるが少ない.
分布 やや山地性,分布は限られるが珍しくはない.
本州,四国        県別分布表




ウスモンオトシブミLeptapoderus (Pseudoleptapoderus) balteatus Roelofs,1874

体長 5.0-7.0(mm)
色彩 薄い黄褐色,上翅周辺部および中央後に帯状の暗色部がある.後肢腿節後半部は黒色.
特徴 上翅はやや短く,前胸は三角形.色合いは個体変異があり,上翅の紋が黒くはっきりしたものからほとんど消失するものまである.
近似種 なし
ホスト キブシ,ゴンズイ,ウツギ,エゴノキ,クズ
生態 年2化?晩春,晩夏出現,曲裁型揺籃
東海地方ではほとんどキブシを利用している.葉を横J字状に切って巻き,ときに切り落とすこともある.8月中旬から9月初旬にかけて葉を巻く個体があり,一部は2化している可能性が強い.
分布 普通種(平地,山地)
北海道,本州,四国,九州        県別分布表




ウスアカオトシブミLeptapoderus (Leptapoderidius) rubidus Motschulsky,1860

体長 4.0-6.0(mm)
色彩 赤褐色,頭部および胸部の腹面は暗色.
特徴 体型は細く,前胸は三角形,上翅点刻列ははっきりしている.雌雄の形態差はほとんどない.
近似種 なし
ホスト リョウブ,ウツギ,ネジキ,タンナサワフタギ
生態 年2回晩春,夏出現,曲裁型揺籃
葉を横J字状に切って巻く.新成虫は夏に現れるが少ない.
分布 平地には少ないが,山地では普通.
北海道,本州,四国,九州,サハリン,シベリア,中国,朝鮮        県別分布表




ヒメクロオトシブミCompsapoderus (Compsapoderus) erythrogaster Snellen van Vollenhoven,1865

体長 3.5-5.5(mm)
色彩 全体光沢のある黒色,肢のみ赤褐色,肢および腹部のみ赤褐色.
特徴 上翅の点刻列はまばらで弱く間室はほとんど隆起しない.雌雄の形態差はほとんどなく野外では判別不能.北日本では黒色型,西日本では赤腹型であるが東海地方ではすべての型が混在している.
近似種 セアカヒメオトシブミ:
ホスト ツツジ,コナラ,クヌギ,アベマキ,ミズナラクリ,ノイバラ,キイチゴ,マンサク,シデ,
ヤマハンノキ,ヤシャブシ,フジ,ニセアカシア,サルスベリ
生態 少なくとも年2化,春から秋まで見られる.両裁型揺籃
葉の両側から中央に向かって切り巻く.ツツジやバラに作られる揺籃とコナラやクヌギに作られるそれとでは大きさにかなりの開きがあるが,必ずしも成虫の大きさとは関係していない.様々な植物に揺籃を作るが,同一個体が多くの種類の葉を利用するのか,1個体は限られた葉しか利用しなくても個体ごとに利用する葉が異なっているのか定かではない.
分布 最も普通種
本州,四国,九州        県別分布表
備考 長野県には上翅だけが赤い次種とほとんど区別できないものがいる.上翅の点刻が弱く間室の隆起もほとんどないが前胸の形がわずかに異なるように見える.これをカラフトヒメオトシブミ  A.erythropterus とする見解もある.生態的にはヒメクロオトシブミと同じでありどちらに分類されるべきか分からない.



セアカヒメオトシブミCompsapoderus (Compsapoderus) genimus Sharp,1889

体長 4.0-6.0(mm)
色彩 上翅は赤褐色,その他はやや光沢のある黒色.全体に黒化する個体もいる.
特徴 形態の上では前種とほとんど差がない.上翅の点刻列は密で強く間室はやや隆起する.北海道産は点刻がやや弱くなる.後頭部の形状がオスとメスとではわずかに違いメスのほうがより丸みが強い.
近似種 ヒメクロオトシブミ:  黒化した個体ではほとんど区別できない.
ホスト ヤシャブシ,ヤマハンノキ,ヤナギ,オオイタドリ,イタドリ
生態 年2化?初夏,夏.両裁型揺籃
葉を両側から切って巻く.晩夏に揺籃を作っている個体がいるので,一部は2化していると思われる.
分布 山地では普通
北海道,本州        県別分布表
備考 長野県ではツツジ,バラ,ワレモコウから得られる個体はやや小型で上翅の点刻も弱くヒメクロオトシブミの特徴を備えたものがいる.ヒメクロオトシブミとすべきか,セアカヒメオトシブミとすべきか,それとも別種か?
新潟県糸魚川市小滝での観察ではオオイタドリに大きな揺籃を作っており,産卵数を調べたところ2-6卵,,平均3.8卵であった.また,揺籃をとってきて飼育したところ,1つの揺籃から4個体が同時に羽化した.




クビナガオトシブミ グループ
 オスの後頭部が著しく長く,基部が円筒状になり「首」を形成してることが最大の特徴である.触角もオスはメスの1.5倍ほども長い. このような形態差はカブトムシやクワガタムシのようにメスをめぐるオスの間の競合から発達したものと考えられる. 小型の個体ではオスでも頭部,触角が短く,一見メスのように見える.おそらくストーカーとしてメスをねらっていると思われる.
かつては クビナガオトシブミ亜族 とされていたが,オトシブミ亜族に統合された.

エゴツルクビオトシブミCycnotrachelodes roelofsi (Harold,1877)

体長 オス 6.0-8.0,メス 5.0-6.5(mm)
色彩 光沢のある黒色.
特徴 オスの後頭部は円錐状に細まり首のように円筒状となるのが特色である.メスの後頭部はヒメクロオトシブミに比べれば多少長い程度である.小型のオスはメスとほとんど外見上の差がない.
近似種 なし,小型のメスはヒメクロオトシブミに似る.
ホスト エゴノキ,フサザクラ
生態 年2回春,夏出現.曲裁型揺籃
葉を横J字状に切って巻く.8月から9月にも揺籃が見られ年2化していると思われる.
分布 普通種(平地,山地),個体数は多い.
北海道,本州,四国,九州        県別分布表




ヒゲナガオトシブミParatracelophorus longicornis (Roelofs,1874)

体長 オス 7.0-11.0,メス 6.0-8.0(mm)
色彩 ヒゲナガ:  暗い赤褐色.
キイロヒゲナガ:  明るい赤褐色.
特徴 オスの頭部は極めて長く体長の35%にも達する.和名のように触角も長く頭長を越える.メスの頭部も他のオトシブミ類のメスと比べると長い.外見上ヒゲナガとキイロヒゲナガを区別するのは色彩以外にないが,両者の中間の色の個体がありはっきりとは分離しない.ホストの違いで判断する.
近似種 なし
ホスト ヒゲナガ: アブラチャン,カナクギノキ,クロモジ,フサザクラ
キイロヒゲナガ: イタドリ,リョウブ,コブシ,ブナ,タンナサワフタギ
生態 年2回晩春,夏出現.両裁型揺籃
葉の両側から切り込み巻く.イタドリに作られる揺籃はときに3cm近いものもあり,複数個体が同時に生育する可能性がある.ヒゲナガの方がキイロヒゲナガよりやや早く現れる.
分布 普通種 キイロヒゲナガの方が多い.
北海道,本州,四国,九州        県別分布表
備考 ヒゲナガオトシブミとキイロヒゲナガオトシブミ P. fluvus (Roelofs,1874)を別種とする意見もある.両者は生態的には分離されているようであるが,系統の違いなのか,亜種レベルなのか,別種なのか検討を要する.




Clitostylina

アカクビナガオトシブミMorphocorynus   nigricollis (Roelofs,1874)

体長 オス 5.0-8.0,メス 5.0-6.5(mm)
色彩 頭部と腿節は黒色,他は暗赤褐色.
特徴 前種同様オスの後頭部が著しく長いが首状の部分がない.メスの頭部もかなり細長い.上翅は強く密に点刻される.
近似種 なし
ホスト カマツカ,ズミ,カリン,スモモ,アンズ,リンゴ,ウラジロノキ,サクラ
生態 年2回春,夏出現.両裁型揺籃
葉を両側から切って巻く.主脈に噛み傷を入れない.8月に新成虫が後食をしているのを見るが個体数は少ない.
分布 普通種(前種に比べると少ない)
本州,四国,九州        県別分布表




マダラオトシブミ亜族Hoplapoderina


ゴマダラオトシブミAgomadaranus (Agomadaranus) pardalis (Snellen van Vollenhoven,1865)

体長 6.0-8.0(mm)
色彩 明るい黄褐色,黒い斑点.様々な程度に黒化する個体がいる.
特徴 上翅肩には小さな突起がある.メスのそれは内側に向かってとがっている.
近似種 なし
ホスト クリ,アベマキ,コナラ,ミズナラ,ヤシャブシ,ヤマハンノキ
生態 年2化?初夏,夏出現,片裁型揺籃
主脈の手前まで一直線に,次に主脈に沿って上方に向かい,L字型に葉に切り込みを入れる.揺籃は成虫脱出後もそのまま残っており,しばしば他の虫たちの隠れ家や餌となっている.オトシブミとともに見られることが多いが本種の方が分布域は広いようである.新成虫の一部は8月から9月初旬に揺籃を作っており2化しているようである.
分布 普通種(平地,山地)
北海道,本州,四国,九州        県別分布表




ヒメゴマダラオトシブミParoplapoderus (Gomadaranusvanvolxemi (Roelofs,1874)

体長 6.0-7.0(mm)
色彩 地色は暗い赤褐色で黒い斑点がある.東海地方では黒化する個体が多い.光沢はない.
特徴 上翅中央に1対の顕著なコブがあり,その直前にも小さな1対のコブがある.上翅肩は前種のような突起は持たないがやや角張る.
近似種 なし.完全に黒化した個体は一見ヒメコブオトシブミのように見える.
ホスト オヒョウ,エノキ,ケヤキ
生態 前種同様葉をL字型に切って巻く.
分布 山地性,東海地方では多くない.
北海道,本州,九州        県別分布表




ヒメコブオトシブミPhymatapoderus flavimanus (Motschulsky,1860)

体長 5.0-6.5(mm)
色彩 光沢のある黒色,肢は明るい黄色,後腿節背面のみ黒色.
特徴 上翅中央に1対の円錐形の大きなコブがあり,肩ははやや角張る.前胸背板はほとんど点刻がない.
近似種 オオコブオトシブミ:  分布が重ならないので実際上紛れることはない.
ホスト コアカソ,アオカラムシ,ヤブマオ
生態 年2回初夏,夏,曲裁型揺籃
横一直線または曲線に葉を切って巻く.大きな葉に作られた揺籃は長さ4cmにもなるものもあり,2個体同時に生育する例も報告されている.複数産卵が20%に及ぶ地域もある.3卵以上産み込まれた揺籃はまだ見たことはない.食草の生育環境から比較的湿った林内にいることが多い.
分布 普通種,やや山地性.
本州,四国,九州        県別分布表




オオコブオトシブミPhymatapoderus subornatus (Sharp,1889)

体長 6.5-7.2(mm)
色彩 光沢のある黒色.
特徴 前種に似るが前胸背板は点刻される.
近似種 ヒメコブオトシブミ:  分布が重ならないので紛れることはない.
ホスト オヒョウ,イラクサ類
生態 葉を横J字に切って巻く.筆者は観察していないので詳しいことは知らない.
分布 北海道        県別分布表
備考 前種と大きさがやや異なるだけで別種ではないとする見解がある.