WORK
LEGEND
CONTENT LIST
あした輝く

夏樹今日子
浅田美代子
夏樹家の令嬢 奉天旭高等女学校生徒 のち香の妻 血液型A
速水香
志垣太郎
陸軍衛生上等兵 シベリアでの抑留生活を経て帰国を果たす
加賀中尉
沖雅也
今日子を見染め16歳の誕生日に求婚 のち速水の脱走を扶助
夏樹栄介
北沢彪
夏樹病院院長 今日子の父 帰国途上満洲の原野で息を引き取る
緑川和子
田島令子
今日子の恩師 明日香の実母 引揚船上で出産後に息を引き取る
速水明日香
長藤尚子
緑川和子の子 今日子が自分の子として育てる (劇団ひまわり)
速水昌江
津島恵子
香の母で助産婦 病に伏し香の帰国の日に息を引き取る
石野ひろ子
志摩みずえ
一緒に帰国する今日子の同級生 肝心なところで一言多い
西崎繁
村野武範
戦後に今日子が勤める西崎海産の御曹司 今日子に好意を抱く


制作
芸映プロ
配給
松竹
監督
山根成之
原作
里中満智子 
脚本
ジェームス三木 南部英夫 山根成之
音楽
田辺信一
宣伝コピー
「同棲時代」「愛と誠」に続く青春3部作決定版
「同棲時代」「愛と誠」に続く青春大作!
ロケ地
静岡県御殿場市 千葉県九十九里浜 東海汽船(東京~大島航路) 
北海道江別市近郊 江別市立江別小学校 他
完成試写
東京・五反田 東洋現像所 試写室 1974年(昭和49年)10月28日 20:00から
映倫審査
1974年(昭和49年)10月28日 No.18148  映倫・青少年映画審議会推薦
上映時間
1時間31分 7巻2,491m
封切
1974年(昭和49年)11月2日
興行成績
初日動員5,010(土曜) 興行日数21 動員70,640(東京4館計) 一日平均3,363
同時上映
ふれあい 主演:中村雅俊・壇ふみ

概略
美代ちゃん2度目の主演映画で、当時、作品の選定に美代ちゃんの希望があったことが知られていた。演技には美代ちゃん自身の解釈も取り入れられ、多忙の中、本作のロケーション遠征などにスケジュールを最優先し、約1か月をかけ本格的に撮影された。

この映画の原作は、ちばてつやさんのご両親の体験談を一部参考に、里中満智子さんが週刊少女フレンド誌上に連載した大作コミックで、この感動的な物語を今でも深く心にとどめる人は数多い。映画化は、種々検討の末、終戦時からを描く前半と昭和28年以降を描く後半との二部構成で映画化されることになったが、その後、後半部の映画化は見送られ、前半部のみが公開された。後半部では、美代ちゃんは成長した明日香を演じられる予定だった。

昭和20年、終戦前夜の満洲国奉天を舞台に物語は始まる。映画としての演出から、満洲の原野を祖国へと引揚げていく物語途中のシーンから始まり、カットバックを繰り返すという手法をとっているが、内容はほぼ原作通りである。また、タイトルバックでは原作コミックのカットを彷彿とさせる演出も取り入れられていた。この作品中、りんごにかかわるエピソードが繰り返し描かれ、これがまるで最初から美代ちゃんをイメージして書き下ろされたかのような錯覚をおこす。

敗戦。混乱が始まり、それとともにいよいよ物語は展開する。巧みなカメラワークで表現されるはじめてのくちづけのシーンは中盤の大きな山場で、この後、次第に映画はテンポを上げて進行していく。------はじめてのくちづけはビスケットの味がした------子供が生まれたら明日香と名付けよう------帰国の希望を阻む果てしない満洲の平原------貨物列車での別離と流産------引揚船上でのあらたな決意------生を信じて夫を待ち続ける日々------言葉なく抱きしめ会う再会の舞鶴港------

当時18歳の美代ちゃんは、ほのかに恋をする16歳の少女から、母としてたくましく生きる24歳までの主人公の姿を立派に演じきり、当時の青少年・少女に大きな感動を与えてくれた。貨車の中で流産するシーンは美代ちゃん迫真の演技で忘れられない。上品な育ちながらもしっかりとした意志を持つ主人公の姿は、美代ちゃんなればこそ創出できた映像であったと言いきって間違いはなく、当時、とある辛口の評論家をしてプライドを捨て称賛せしめた。原作から若干変更されている設定はあるもののプロットにおいて原作との齟齬は殆どなく、今日、学研「日本戦争映画総覧」に「1974年 松竹・芸映プロ作品 主演:浅田美代子・志垣太郎」の戦争映画としてもリストアップされている。