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LEGEND
CONTENT LIST
陽のあたる坂道

田代くみ子
浅田美代子
田代家長女 脚が不自由で性格や兄弟関係に影を落とす
同上
豊島美樹子
兄の雄吉が原因で脚にけがをする (子役)
田代信次
三浦友和
田代家二男 出生に秘密があり粗野で自由奔放を振舞う
倉本たか子
壇ふみ
女子大生 くみ子の家庭教師として田代家にやってくる
田代雄吉
松橋登
田代家長男 医大生 外面を取りつくろうのがうまい優等生
田代玉吉
池部良
父親  芸者との間に信次をつくった
田代みどり
新珠三千代
母親  雄吉をかばう信次の偽善心を見抜いている

制作
東宝映画
配給
東宝
監督
吉松安弘
原作
石坂洋次郎
脚本
池田一朗
音楽
小野崎孝輔
宣伝コピー
粗野で反抗的な青年に偽りのない愛を見た―
ロケ地
世田谷区田園調布 目黒区自由が丘 多摩川河川敷 文京区鳩山一郎旧宅
映倫審査
1975年(昭和50年)10月13日 No.18470 芸術祭参加作品
上映時間
1時間56分 9巻3,171m
封切
1975年(昭和50年)11月1日
興行成績
初日動員6,720(土曜) 興行日数28 動員96,850(東京5館計) 一日平均3,458
同時上映
はつ恋 主演:仁科明子 井上純一

概略
70年代、美代ちゃんが出演された最後の劇場映画で、また唯一の東宝作品。美代ちゃんの石坂洋次郎原作映画への出演構想はそれまでにもあったが、この作品で実現することになった。その昔、石坂洋次郎の小説は、文庫本を一種のアクセサリー感覚で持ち歩く人もいたほどで、70年代半ばの当時にあっても人気は衰えず、美代ちゃんもその愛読者の一人だった。この年の春に予定されていた松竹による3回目の主演映画は、企画が模索されながらも結局ご破算となり、70年代では、この準主役作品を含めた4本が、美代ちゃんの出演映画として残されている。

50年代、60年代にそれぞれ映画化され、この映画は70年代の陽のあたる坂道という触れ込みで、美代ちゃんは出演者クレジットの3番め。本作品のなかでも特に性格表現の難しいくみ子役に果敢にチャレンジされた。 美代ちゃんのキャスティングは早くから決まっていて、演ずるくみ子のウエイトを割と高くとってあった。登場人物の心理造形がカギとなるこの作品で、 前2作と比較される プレッシャー、観客が美代ちゃんに持つ固定イメージ、かたや一言で言い表せないくみ子を演じる難しさ。登場シーンは全100シーン中26シーン。

美代ちゃんは当時19歳。近代映画同年11月号の記事によると、美代ちゃんがこの作品の原作を読んだのは中学生の時で、出演が決まりもう一回じっくりと読みなおし、作品の奥深さを感じたそうだ。台本を何回も読み返し、家族関係や登場人物の内面について考え、くみ子に共感できない自分を感じずいぶん悩まれたという。そして、役作りができないまま撮影がスタートしてしまったが、演じていくうちにくみ子の心情がわかるようになったと記されている。この映画を語るに、美代ちゃんと呼ぶにはどこかはばかるところがある。それほど田代くみ子になりきっておられたのだと思う。一概に推し量れるものではないが、人気スターとしてでなく、もはや一人の女優として出演されていたのではなかろうか。

映画は前2作との差別化を意識してか、レフ効果の強調や物語展開のテンポなどで、明るくさわやかな印象に仕上げられていた。キネマ旬報ベストテン選考において、50年代作品は96票11位、60年代作品は得票なし、本作は6票50位の評価であった。各年の審査員数そのものが異なり、単純比較できるものではないが、作品の評価をイメージしていただくため参考までに記す。